2008年4月22日火曜日

太りゆく人類―肥満遺伝子と過食社会



太りゆく人類―肥満遺伝子と過食社会 (ハヤカワ・ノンフィクション)


勝間和代ご推薦の本だったし、なぜ人間(私と言い換えた方がより正しいが)は太るのかを知りたかったので読んでみた。同じ量食べても太る人と太らない人がいる。太ることは意志の問題だ、と言われているけれど、そうでもないような気がしたので。


結論から言うと「なぜ人間でも太る人とそうでない人がいるのか、その理由は完全には解明されていない」前半は肥満遺伝子を見つける科学者たちの努力(製薬会社と癒着しての暗躍、とも言えるが)が書かれている。太ったり痩せたりはどうも一つの遺伝子によるものではなく、複雑なシステムらしい。一つの遺伝子に対して作用し、それによって体重を減らすような薬を与えても、じきに他の体のシステムがバランスをとってリバウンドしてしまう。だから万人に効果のあるいわゆるやせ薬はまだ存在していない、と。


さらにその遺伝子に作用を起こすことによって、重大な副作用が起こることがある。しかし何兆円もの市場があるやせ薬市場で儲ける製薬会社は、お抱えの学者(ただし肥満研究の世界では権威)に大政翼賛論文を多数執筆させ、FDAにも圧力をかけてその薬を承認させてしまう。さも痩せるように編集されたきれいな新薬のCMを見た太めの人たちは、副作用に関する警告などは気にせず医者にその薬の処方をせがむ。そのうち体の不調を訴える人が続出する。。。どこかの国でも聞いたことのあるお話ですね。


後半はさらに怖い話。南太平洋のコスラエ島では島民の平均寿命が50歳代になり、主な死因は糖尿病、心臓病。原因は島民が昔からの食事を捨て、西洋化された輸入加工食品に頼る生活をし始めたこと。バナナ、パパイヤや島で取れる魚は調理が面倒くさいので、缶詰のハムや砂糖いっぱいのシリアル、コーラなどを食べ始め、それが富の象徴になってしまった。その結果50歳過ぎるともう死ぬのを待つ状態。車を乗り回すので運動もせず、その結果どんどん太ってどんどん病気になる。


そのような加工食品を作る(主にアメリカの)食品業界、レストラン業界にも非があるという話に続いてゆく。アメリカでは学校は清涼飲料水会社と契約してカフェテリアに独占的に飲料を置く代わりにPCや学校の備品を買ってもらう。そこには甘くない飲み物はない。毎日中毒性のある甘い飲み物を飲んだティーンエイジャーは清涼飲料水会社の優良顧客になる。


ファーストフードのバリューセットにはサラダはない。サラダはあってもバリューセットと同じくらい高く値段が設定してある。サラダは原価利益率が悪く日持ちもしない。フライドポテトはラージにしようがスーパーサイズにしようが利益率がよく鮮度管理は必要ない。そのようなバリューセットが含むカロリーは成人一日の所要量の2/3以上。健康のためサラダをセットに入れるようお願いしてもロビイストを使って「食物選択の自由を守れ」と却下する。フィンランドでは政府の補助金を使ってレストランでは必ず野菜サラダを出すようになっている自治体がある。そこでは成人病になる人の数が劇的に減っている。。。


食べ物には気をつけなければいけないなあ、と思いました。最近もどこかで日本の若者は果物を食べなくなっている。理由は「高いから」だという記事を読みました。確かに果物より栄養ドリンクのほうが安いですよね。でもそれはどうしてなのか、考えなきゃいけないと思います。なぜ原料より安い食品が出てくるのか。


痩せるにはどうしたらよいか、という不純な動機で読み始めたのですが、読み終わって非常に義憤にかられ、当初の目的はどこかに行ってしまいました。





1 件のコメント:

  1. 久しぶりにため読みしてるけど、丹々荘主人さんのブログは奥が深いなぁ。特にこの記事には結構くいついちゃう。以前Supersize Meという映画も見たけど、優先されなければならないことがいかに企業利益追求のために犠牲になっているか、ということですよね。食べるものがこれだけあふれている私達の社会って幸せだし、だからこそ自分の口に入るものは気をつけて管理しないと。私達の小さい頃は、学校給食なんて栄養士さんが管理して、バランスの取れたもの出してた気がするけどな~(その代わり味はいけてなかったり、私の大嫌いなしいたけが毎回でてきたりしてた)。子供の健康を犠牲にするなんて、許せん!!

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