2008年7月16日水曜日

カイト・ランナー / カーレド・ホッセイニ



カイト・ランナー


6月に難民映画祭というのが東京で開かれていた。この映画祭の最後に上映されたのが「君のためなら何回でも(原題:Kite Runner)」だった。見に行きたかったけど教えてもらったのがその日だったので、逡巡していた。調べてみると原作が邦訳されていることがわかり、本を読もうと思い、取り寄せて読んでみた。


読むと、まずかなり驚いた。イスラム圏の人々の日常生活が克明に描かれている。男女間の交流やお酒を飲むことが禁じられ、一日に何度も礼拝することが義務付けられている文化に住む人はどのような生活をしているのだろう?と常々思っていた。どうやって結婚するのだろう?恋愛をすることはないのかなあ?など。


私の疑問に対してかなりクリアなイメージを与えてくれる本ではあった。アフガニスタンを舞台に人々の生活(といっても主人公はかなりの上流階級に属する)がカブールでどのような暮らしをしていたのか。内戦で命からがら祖国を脱出するときにどのような体験をしたのか。亡命先のアメリカでのアフガニスタン人社会ではどのようにふるまったのか。まずこれに驚いた。


さらに、本来のストーリーは読んでて目を背けたくなるような、顔をしかめてしまうような情景がたくさん出てくる。何でもありな韓流ドラマもびっくりな試練が次から次へと出てくる。著者がどこまで実体験をしたのかはわからないが、読むに堪えない、読んでてつらくなるこれらの展開は、ある程度の実体験を下敷きにしないと書けないような気がした。しかし、アフガニスタンの歴史、そして現状がここまでひどいとは。


辛すぎてややもするとメロドラマになりそうな展開ではあるのだが、著者はこれらの試練の描写にたけている。冷徹な視線から言葉が紡がれ、伏線もきれいに張ってあって、一気に読んでしまう。


読み終わって、日本に生まれ、ここで色々な人に囲まれて全く平和に今日を生きていることに感謝したいと思った。ここから何千キロしか離れていないある国では、現在でもこんなに悲惨な状況があるのだ。考えさせられた。







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