2002年7月6日土曜日

全女 in 大田区体育館



女子プロレスというものをはじめて見た。


ある日クリーニング屋に行くと割引券がカウンターの上においてあって、当日3000円のところ1000円で見られるという。なんだかメチャクチャな割引率だと思ったが数枚もらっておいた。クリーニング屋のオヤジも「俺も一回行ったけど面白かったっすよ、千円なら安いし」と言っていた。


当日「バッカじゃないの」とは言わないがそういうオーラを明らかに発している妻を残し単身体育館に向かう。体育館は目を覆いたくなるようなショボい高度成長期の遺物だったが、人出は多く結構賑わっている。もう試合は始まっており、大仰しい選手紹介のアナウンスが外からでも聞こえる。


当日券売り場に並ぶ。千円の券は既に売り切れてしまったらしい。何だか詐欺っぽいなあ。ま、二千円の券があるというのでそれを買って中に入る。席に着くと1階リングサイド正面の最後列だった。


といっても椅子は十列くらいしか並んでいないのでリングが結構近い。おいおい、外でダフ屋が売っていたリングサイド六千円ってのはどこなんだ?二千円でここに座れるんならめっちゃ満足だぞ。


まずロビーに出てビールを買う。350円と書いてあったので一本買って千円札を出すと妙に腰の低いおっさんが700円お釣りをくれた。


席に戻ってビールを開ける。隣にはギャルっぽい女の子が2人連れで座っている。1人は全くプロレスを知らないらしく相方に何でもかんでも聞いている。2階席はもうすっかり埋まっている。そこかしこでパタパタ揺れるうちわが遠目にきれいだ。あそこが千円の席なんだろうな。観客層は男女比半々、掛け声をかける格闘技命な男性に混じって、旗を振ったりリングに投げる紙テープを一生懸命準備している女性も結構いる。ううむ、不思議な空間だ。


試合もかなり不思議だった。モモナナっていうコギャル(系?)タッグがあった。デニムにいっぱいラメのついたコスチュームで、技が決まると二人でピースサイン出して「イェーッ!」と叫んでいた。彼女たちはこの日何かのタイトルマッチに挑戦者として出て、なんとタイトルを獲得してしまった。


プロレスに付き物の場外乱闘もまさに常軌を逸していた。体育館のアリーナの真ん中にリングはしつらえられていた。そして体育館の正面って絶対舞台があるけど、何故かそこまで1人が相手を引きずってゆき、舞台の上から相手に跳んでいた。


また、何故か二階席でも場外乱闘があった。階段を上がって二階に行っていたのだ。何故?どうして?という問いを発してはならない何かがここにはあった。


リングの上でもみんな「コノヤロー!」とか「ふざけんじゃねー!」などの掛け声と共に相手をロープに投げていた。髪を振り乱してそういう雄叫びを上げる顔、また技をかけられて苦悶にゆがむ顔などを見ていると、楽な商売はないんだなあ、と思った。彼女たちは自分のかなり奥深くの部分をさらけ出してるなあ、それがプロレスラーに求められるものなんだなあ。


選手がリング上で紹介される際に、ファンは紙テープをリングに向かって投げる。ここでも事件は起こった。レスラーごとに紙テープの色が統一されている!この選手は赤、次の選手は黄色、メインエベンターは単色で、中堅クラスになってくると何色かのコンビネーションになる。しかし驚くべきことはそのお約束(であろう)色以外のテープが全く飛ばないことだ。


統制された熱狂、何かこの間見た宝塚に共通するものがあるようだ。女性が主体になるとこの現象が見られるのだろうか。さらにフィールドワークを続けねば。


メインエベントになり、タイトル保持者豊田真奈美と挑戦者伊藤何某のタイトルマッチが行われた。なぜか武道館でも東京ドームでもなく、このショボい大田区体育館でタイトルマッチが連発される。そんなに重要な会場なのだろうか、ここは。実は全女の聖地だったりスて。


話を戻して最後の試合、技とかはよくわからないけどそれなりに白熱した試合だった。私の右隣の団体は伊藤何某のファンらしく、「イトちゃ~ん」と叫びながら「伊藤」とだけ勘亭流で書かれたプラカードを振っていて、豊田に中指を突き立てられていた。豊田の黒いコスチュームのお尻のところが少し破けて、中のベージュ色のものが少し見えていた。そういう状態でありながらも観客を煽動し続けるショーマンシップはすごい。


しかし力及ばず伊藤にフォール負けし、豊田はタイトルを失った。しかしその後のマイクパフォーマンスで、彼女は全女を今日限りで退団することを明らかにした!





おいおい、豊田真奈美、最後の舞台が大田区体育館でいいのか?





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