おじさんになってこういう本を読むからこの本がよく感じられるのかな。
若くてキラキラした、だけどまあ陰のある主人公。彼の人間関係がウエットではないんだよな。熱くなることもなく、しかし自分の信念に忠実に、自分をしっかり持って生きている。若い時にこういう小説を読んだら違ったのかなー。当時はこういう小説読む気にならなかったかなー。主人公が歳を取っていろんな殻とか付属品で重くなった私にいろいろ教えてくれているような気がするなー。
私は図書館で借りて読んだのでハードカバーだったのだが、今新品で入手可能なのは文庫しかないようなのでこちらをリンク。
探してでも一生に一度は読むべき価値のある本。ストーリーの組み立てが素晴らしい。そして破天荒、さらに通奏低音としてどうしようもない諦念が感じられる。まさに私好み。13篇の短編小説(小説といえないものもあるが)が、読み進めていくうちに絡み合ってきて時空を超えた大きなパノラマを形成する。出てくる人々がすべからく醒めていて、乾いた感じ。この作者はどうやってこの作品の構想を得たのだろう。ボブ・ディランが静かに歌っているような感じ。読み終わったときの感じも何ともいえない。
こういう本が新潮文庫の100冊に入ればいいのに。
たまに飲みに行っている私のお気に入り、大森山王の飲める古本屋、あんず文庫で購入。店主の加賀谷さんも登場します。11人が自分の一番好きな詩を紹介し、それについて近代詩伝道師Pippoさんと対談する、という形の本。
詩の世界って私には今まで、国語の教科書にこういう詩出てきたよねー、のレベルを越えず、どうも敷居が高かったのだけど、この本であげられる詩はそれとは少し違っていて、現代詩もあればテレビアニメの冒頭のナレーション(!)というものもあった。そしてその一篇一篇が、いいなあ、と感じられた。この本の構成が秀逸なんだと思う。以下少し解説。
もし、自分ひとりでその詩をポコンと目にしても、良さがわからないと思う。実際宮沢賢治とか室生犀星の詩も読んだことあるけど、あまりピンとこなかった。この本では、11篇の詩に対して、その詩を大好きな人とPippoさんが話してて、この詩のどんなところが好きなのか、どういうシチュエーションでこの詩に出会ったのか、そういうことが話される。それを読むうちに、ああ、詩ってこう読むんだ、こういうアプローチで詩に近づくんだ、ということに気づく。
この本は詩の世界、という大きな世界に入るよいきっかけになると思う。少なくとも自分はそう感じたし、詩に対するこういうきっかけはいままでなかった。何人かもっと読んでみたい詩人さんもでてきたし、ワクワクするいい本でした。