2020年10月25日日曜日

昭和16年夏の敗戦 / 猪瀬直樹

 昭和16年に日本において、内閣総理大臣の下に30代の精鋭官僚、軍人、大企業会社員を数十人招集し、総力戦研究所という組織が作られた。 これからの戦争では武力だけでは勝てず、物流、外交交渉、情報戦、国民の意識など総力戦になる、という、だから将来の日本を背負って立つ人材にそれを検討、勉強させる、という読みは素晴らしい。 欧州では国防大学という考え方があって、それをコピーしたとも書いてあるけれども。 彼らが自分たちの出自のセクターの最新、かつ機密な情報を総動員して出した結論は「緒戦は勝てるも数年中に南洋からの石油の供給が途絶し日本必敗」 軍艦がたくさんあっても動かす石油を日本に運搬するシーレーンが防衛できず商船隊が全滅して石油不足で終了、と。 その報告を聞いた内閣総理大臣も東条英機も、必敗という結論が理解できたものの軍部の独走を抑えられる統治機構になっておらず、天皇も実際の統治は行っておらず軍部を止められず、あげくのはてに怪しいデータをでっちあげ戦争に突き進むことになってしまった。 

  失敗の本質―日本軍の組織論的研究でも読んだ内容をもう一度読んでるような気がした。 そして、戦争をしても絶対勝てない、という予想が内閣で共有されていたにもかかわらず、戦争に突き進んでしまう。 日本人の恐ろしい特質のような気がする。

 本の中でもいろんな人が語っているが、自分も非常時になるとこういう思考に陥った経験がある。結論としてはおかしいのだが、それをNoといえる雰囲気ではなく、無理くりひねり出した理屈は自分の責任範囲においては正しく、それがおかしい結論を導き出すとしても、それは自分の責任ではないのだ、という。本当に怖い。

 歴史から学んで、その失敗を繰り返さないようにしないと。

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