2020年12月2日水曜日

とにかく死なないためのしょぼい投資の話 / えらいてんちょう(矢内東紀)

このひとのしょぼい起業で生きていく、や静止力 地元の名士になりなさいは読んだことがあって、面白い考え方をする人だなあ、と思っていた。この人の考え方と「投資」という単語があまり結びつきそうにないなあ、と思ったので買って読んでみた。そういうことなのねー。ネタバレになるから答えは言わないけれど、なるほどって感じ。私もこれからそうやって生きていこう、と。お金がなくても、何とか生き抜けそうな気がしてきた。社会ってそんなに悪いものではないんだね。

 

人生がときめく片づけの魔法 / 近藤麻理恵

 今更この本?って感じだけど、カミさんさんの本棚にだいぶ前から入っているのをみて、先日手に取ってみた。著者は「こんまり」と呼ばれていて、なぜか世界で最も影響力のある100人に選ばれたりしているという。片付けの先生がなぜ?というのもあり。

 読んでみて理由が分かった。この本は片付けのハウツー本ではない。この人は片付けを人に教えているのではない。もっと大きなものを会得し、それをみんなに広めているのだ。人生にとって大切なものは何か?そのような大きな問いから片付けを行っているのだ。

なるほどなーと思った。今日自分の持っている服の1/3くらいを処分した。自分の持っている本の半分以上を処分した。結構簡単にできる。ときめくか、ときめかないか。それが問題。


2020年10月27日火曜日

ぼくは勉強ができない / 山田詠美

おじさんになってこういう本を読むからこの本がよく感じられるのかな。

若くてキラキラした、だけどまあ陰のある主人公。彼の人間関係がウエットではないんだよな。熱くなることもなく、しかし自分の信念に忠実に、自分をしっかり持って生きている。若い時にこういう小説を読んだら違ったのかなー。当時はこういう小説読む気にならなかったかなー。主人公が歳を取っていろんな殻とか付属品で重くなった私にいろいろ教えてくれているような気がするなー。

ならずものがやってくる / ジェニファー・イーガン : A Visit from the Goon Squad / Jennifer Egan

私は図書館で借りて読んだのでハードカバーだったのだが、今新品で入手可能なのは文庫しかないようなのでこちらをリンク。

探してでも一生に一度は読むべき価値のある本。ストーリーの組み立てが素晴らしい。そして破天荒、さらに通奏低音としてどうしようもない諦念が感じられる。まさに私好み。13篇の短編小説(小説といえないものもあるが)が、読み進めていくうちに絡み合ってきて時空を超えた大きなパノラマを形成する。出てくる人々がすべからく醒めていて、乾いた感じ。この作者はどうやってこの作品の構想を得たのだろう。ボブ・ディランが静かに歌っているような感じ。読み終わったときの感じも何ともいえない。

こういう本が新潮文庫の100冊に入ればいいのに。

Samba – vision string quartet (Official Video)

なんかいいなあ、この人たち。 
クラシック(?)なのにサンバの気持ちいいグルーヴ、おぬしら只者ではないな。 
映像も笑えるし。
 

2020年10月26日月曜日

一篇の詩に出会った話 / Pippo

 たまに飲みに行っている私のお気に入り、大森山王の飲める古本屋、あんず文庫で購入。店主の加賀谷さんも登場します。11人が自分の一番好きな詩を紹介し、それについて近代詩伝道師Pippoさんと対談する、という形の本。

詩の世界って私には今まで、国語の教科書にこういう詩出てきたよねー、のレベルを越えず、どうも敷居が高かったのだけど、この本であげられる詩はそれとは少し違っていて、現代詩もあればテレビアニメの冒頭のナレーション(!)というものもあった。そしてその一篇一篇が、いいなあ、と感じられた。この本の構成が秀逸なんだと思う。以下少し解説。

もし、自分ひとりでその詩をポコンと目にしても、良さがわからないと思う。実際宮沢賢治とか室生犀星の詩も読んだことあるけど、あまりピンとこなかった。この本では、11篇の詩に対して、その詩を大好きな人とPippoさんが話してて、この詩のどんなところが好きなのか、どういうシチュエーションでこの詩に出会ったのか、そういうことが話される。それを読むうちに、ああ、詩ってこう読むんだ、こういうアプローチで詩に近づくんだ、ということに気づく。

この本は詩の世界、という大きな世界に入るよいきっかけになると思う。少なくとも自分はそう感じたし、詩に対するこういうきっかけはいままでなかった。何人かもっと読んでみたい詩人さんもでてきたし、ワクワクするいい本でした。

2020年10月25日日曜日

昭和16年夏の敗戦 / 猪瀬直樹

 昭和16年に日本において、内閣総理大臣の下に30代の精鋭官僚、軍人、大企業会社員を数十人招集し、総力戦研究所という組織が作られた。 これからの戦争では武力だけでは勝てず、物流、外交交渉、情報戦、国民の意識など総力戦になる、という、だから将来の日本を背負って立つ人材にそれを検討、勉強させる、という読みは素晴らしい。 欧州では国防大学という考え方があって、それをコピーしたとも書いてあるけれども。 彼らが自分たちの出自のセクターの最新、かつ機密な情報を総動員して出した結論は「緒戦は勝てるも数年中に南洋からの石油の供給が途絶し日本必敗」 軍艦がたくさんあっても動かす石油を日本に運搬するシーレーンが防衛できず商船隊が全滅して石油不足で終了、と。 その報告を聞いた内閣総理大臣も東条英機も、必敗という結論が理解できたものの軍部の独走を抑えられる統治機構になっておらず、天皇も実際の統治は行っておらず軍部を止められず、あげくのはてに怪しいデータをでっちあげ戦争に突き進むことになってしまった。 

  失敗の本質―日本軍の組織論的研究でも読んだ内容をもう一度読んでるような気がした。 そして、戦争をしても絶対勝てない、という予想が内閣で共有されていたにもかかわらず、戦争に突き進んでしまう。 日本人の恐ろしい特質のような気がする。

 本の中でもいろんな人が語っているが、自分も非常時になるとこういう思考に陥った経験がある。結論としてはおかしいのだが、それをNoといえる雰囲気ではなく、無理くりひねり出した理屈は自分の責任範囲においては正しく、それがおかしい結論を導き出すとしても、それは自分の責任ではないのだ、という。本当に怖い。

 歴史から学んで、その失敗を繰り返さないようにしないと。